無邪気になりたい大人の遠足-2

 

はじめからよむ

 

社会に疲れた4人の大人が、童心を取り戻すべく立ち上がり、

上野動物園で遠足をすることとなった、その名も「大人の遠足」。

 

そのうちのひとりが、輪を乱した。

 

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「うち、動物嫌いやねん」

 

この一言で楽しい遠足の場は凍りついた。

こどもであれば、「やめなよそんなこと言うの!」とか「男子は黙ってて!」とか

正義感に満ちた女子が即座に仲裁に入るものだ。

しかし、われわれは大人である。

 

大人の世界において、一度微妙な空気になった場を元に戻すにためは、

仲裁より先に即座にだれかが謝るのが穏便である。

この窮地を穏便に済ますためには、つまり、私が謝ればいいのだ。

 

一瞬で頭を整理し、謝罪の体制に入ろうと頭をかがめかけた瞬間、

微妙な空気を裂くかのようにまみちゃんがこう言い放った。

 

「でも楽しそうやからきたんやで」

 

…ああ、ああ。なんだ、ホッとした。

そう、「いやなことも我慢する」というこどもへの教えがある。

こどものころは理解できない教えであったが、

「我慢した先に、楽しいことがあるかもしれない」と思えるようになるのは、

ある程度人生をつんできた大人だからこそ。

大人であるまみちゃんは動物の臭いを我慢して、この楽しい遠足に来てくれたのだ。

 

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(ホッとした主催者)

 

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(マクモさんも安堵した表情)

 

いやしかし、まみちゃんの毒舌が絶大な支持を受けるのがよくわかる。

なんというか、言葉の随所に飴とムチがちりばめられており、巧妙だ。(褒めてます)

 

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(作・やっぱんつ:ヘンな汗をかいた出来ごとだった)

 

 

■遅めのお弁当タイム

背筋の凍るようなできごとや、久々に会った友人と話に花が咲いている間に、

ときすでに午後2時。

参加者がそろったところで、遅めのお昼ご飯にすることにした。

 

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(ちょっぴりお昼のお供を買い出しに)

 

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(お弁当を広げる前に、ビールが必要よね)

 

青空の下で弁当ときたら、ビールだ。

ビールなくして晴天なし、と言い切れるほど、青空とビールは合う。

こどもにはまねできない遠足の楽しみ方だ。

ちなみに上野動物園のビールは500円なのだが、ビールはお菓子に入るだろうか。

 

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(おっ弁当!おっ弁当!)

 

しおりに記載してある持ち物の通り、みんなには各自お弁当を用意してもらった。

手作り弁当を強制しなかったので、私以外は買い弁。

中でもまみちゃんは、みんなで食べようと、ます寿司を持ってきてくれた。

ます寿司といえば駅弁の定番、駅弁と言えば大人のお弁当の定番だ。

 

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(ます寿司が「大人の遠足」感をアピール)

 

本来ならば車内で食べる駅弁も、青空の下で食べるとこれがなかなかうまい。

旅への楽しみが駅弁をうまくするように、遠足のワクワク感が駅弁に色を添える。

自分にこどもができたら、学校や幼稚園の遠足に駅弁を持たせるのも悪くないなと思った。

 

 

 

絵日記再開

やや周囲から視線を浴びつつ、大変に楽しくおいしい遠足のお昼を食べた終えた4人の大人たち。

アルコールのまわりを感じながら、絵日記再開だ。

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(満腹感から「もうお開きでいいんじゃない?」と言ったのは内緒だ)

 

よく考えると、紅白帽被って絵日記を描く分には問題ないのに、

そこにアルコールの臭いがすると一気に迷惑行為感が湧いてくる。

ああ、大人になるということはつらいことだ。

 

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(さぁほろ酔い気分で描きますよ)

 

絵日記を再開したものの、昼を過ぎたあたりからやや来場者が増え始めたせいか、

どこへ行ってもこども、こども、こども。

突然走り出したり、ウロウロするこどもたちに囲まれるものだから、

ゆっくり立ち止まって描いている余裕があまりない。

 

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(落ち着いて描けないんでしゅねー)

 

そんな悪い状況の中で、ヘタクソなりに懸命に描く。

懸命に描くといっても、ヘタクソに拍車がかかるだけなのだが。

 

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(作・まみちゃん:パーツだけ描いてごまかす)

 

4  2

(作・マクモさん:キャラクター化でごまかす)

 

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(作・なっちゃん:そもそも筆圧が弱い)

 

たくさんの人に囲まれながら紅白帽をかぶっていると、

大人にはスルーされるのだが、こどもが容赦ない視線を向けてくる。

しまいには、「ママ、何であの人たち紅白帽かぶってるのー?」

と言われる始末だ。

 

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(なんでだろうね)

 

「なぜ紅白帽をかぶっているのか」、その疑問にぶつかったころ、

動物園は閉園時刻をむかえようとしていた。

私たちもちょうど園内を見尽くしたので、外に出て、絵日記のまとめをはじめた。

 

 

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(閉園したので今日のまとめに入ります)

 

今日の大人の遠足、主催者の私としては、心の底からとても楽しかった。

当初の思惑通り、本当に童心に帰ったかのような楽しさで

実際に「へケ!」と屈託のない笑顔をまき散らすことができた。

 

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(作・やっぱんつ)

 

しかし、悪く言えばこの遠足は、紅白帽によってたくさんの視線にさらされ、

思うように絵日記もかけず、動物のにおいを我慢し、

ビールを飲んでいい気分になっただけの会である。

 

そんな会を、私以外のみんなは本当に楽しめたのか?

童心に帰れたのか?

その答えは、提出をお願いした絵日記最後の1ページに託された。

 

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(作・まみちゃん)


えんそくは、とてもたのしかったです。
たべたし、わらいました。

どうぶつはくさいけど、たまにはいいな。

なんでぼうしかぶってるの?(本当の子供の声)

わたしたちにもわかりません。おとなになるってそういうことなんだよ。

 

 

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(作・マクモさん)

ひさしぶりのどうぶつえんとってもたのしかったです。

ぼうしのおかげでみちゆくひとびとにこうきのしせんでみられたけども

よいおもいでになるでしょう。

 

 

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(作・なっちゃん)

ビールをひるまから、どうぶつえんでのむということは、

よい休日ということ。

また、ますずしもうまい。

 

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(どうやらみんな楽しかったようだ)

 

みんなの絵日記をみて、安心した。

こんな無茶な企画に付き合ってくれて、それだけでいい友達を持ったと思ったけれど、

純粋に楽しいと思ってくれて本当によかった。みんなに感謝感謝だ。

 

童心に帰るとか、はしゃぐとかっていうのは、一人では叶わないこと。

大人でもこどもでも、理解ある仲間がいるからこそ、心の底から楽しい時間を共有できるのだ。

 

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(楽しいことに大人もこどもも関係ない)

 

紅白帽を脱いで、いつもの大人の姿に戻った私たち。

明日も仕事だけれど、それでも、楽しいことや生きる希望がないわけじゃない。

この仲間たちがいる限り、楽しい時間や笑顔はいくらだって作り出せるのだから。

 

写真 (2)

(ちなみになっちゃんはこの後仕事だ。ごくろうなこったである。)

 

 

 

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